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時空を超えた猫 第三章 出会い~安土城編~ [物語(ネタバレなし)]

※初めに、注意事項をお読みください。

※この物語は、すべて作者の妄想100%でできております。

※この物語は、公式の物語と一切関係ありません。

※グロシーンはないと思いますが、心配な方は閲覧をご遠慮ください。

※キャラの性格が、公式のイケメン戦国やあなたの妄想と違う場合があります。そういうのは受け付けないわ!という方は、このまま、回れ右をしてお帰りいただき、このブログのことを一切お忘れいただきますよう、お願いします。

以上のことがお守りいただける方のみ、この先にお進みください…。 
 
 翌朝、身支度を整えている三成を、心配そうに見つめるケイ。不安そうな彼女の頭を軽く撫でながら、優しく言った。

「…大丈夫ですよ。傷も、貴女の手当てのおかげで、ほとんど痛みませんし、決して、無理はしませんから」
「でも、あれだけの大怪我なのですニャ。心配ですニャ…」
「本当に大丈夫ですから、ここで待っててくださいね」

 なだめすかして、ようやく御殿を後にする三成。後姿をじっと見つめるケイ。大きく頷くと、こっそりと彼の後を付けて行った…。

                  ◇◇◇

 本丸御殿の朱塗りの橋に、秀吉が立っていた。三成が慌てて駆け寄ろうとすると、逆に彼が走ってきた。

「走るな、三成! 傷に触るだろう!」
「申し訳ありません、秀吉様。もう、大丈夫ですので…」
「大丈夫なわけないだろう。本当に大丈夫なら…見ろ、彼女が付いてくるわけがないだろう」
「…! ケイさん!」

 秀吉が示した方を見ると、物陰に隠れたケイが、ばつが悪そうな顔をして見ている。二人が駆け寄ると、諦めたように頭を下げた。

「…ごめんなさいニャ…。待ってるように言われたのですが、どうしても心配で、ついてきてしまいましたニャ…」
「…仕方がないだろう、それだけの大怪我なのに、動き回るこいつが悪い」
「秀吉様…」
「とにかく、ちょっとこっちに来い」

 そういうと、秀吉は優しくケイを抱きかかえ、三成と一緒に城の中に入って行った…。

                ◇◇◇

 城の中の秀吉の部屋に来ると、ケイをそっとおろして言った。

「いいか、ケイ。これから大事な軍議があって、俺達はそこに出なきゃいけない。それが終わったら迎えに来るから、今度こそ、大人しく待っているんだぞ」
「…でも…」
「三成なら、俺が一緒にいるから大丈夫だ。決して、無理はさせない。約束する」
「…分かりましたニャ…」
「よし、いい子だ…。行くぞ、三成」

 しょんぼりと頷くケイを優しく撫で、三成を促して、秀吉は出て行った。
 二人がいなくなると、ゆっくりと天井を見上げて、小さく手を握り締める。

(秀吉さん、ごめんなさい! やっぱり、心配だから、じっとしていられません!)

 するすると柱を伝ってのぼり、天井の板を一枚外してもぐりこみ、二人の後を追った…。

                   ◇◇◇

 城の大広間では、近くの大名が決起し、織田軍に反旗を翻そうとしている、という旨の報告があり、それを迎え撃つための軍議が行われていた。
 
「…以上が、斥候から得た、敵の兵站と武器の量、及び、兵の数になります」
「ほう…、で、三成。迎え討つ我が軍は、どれくらいになる」
「敵の三倍は、準備できております」
「そうか…。では、今回の指揮は、家康、貴様に任せる。よいな」
「は! 必ず、制圧してまいります」
「あぁ、期待しているぞ」

 家康の返答に、嬉しそうに笑って見せる信長。光秀の隣で、何故か険しい顔をして、三成を睨みつけている政宗。そんな彼を横目に見ながら、光秀が口を開いた。

「…ところで、三成。怪我は大丈夫なのか?」
「…! …なんの、ことでしょうか? 光秀様」
「とぼけなくていい。昨夜、お前を襲った三人の狼藉者は、こちらで捕らえて投獄してある」
「光秀、だったら聞かなくてもいいだろう。それに、こうしてここに来てるんだ。大した怪我じゃなかったってことだろう」
「そうだがな、秀吉。その狼藉者共が、面白いことを言い出してな…。『石田三成は、ミヤビという二つ名を持つ、陰陽師だ』と…」
「はぁ? そんな訳ねーだろ! 三成がそんな事ができる奴じゃないことは、お前だってよく知っているだろ」
「俺の知りうる範囲、ではな。ただ、奴等が言うには、『とどめを刺そうとした時に、奴は化け猫を召喚して俺達を襲った』、とも言っているんだが?」

 立ち上がって動こうとする政宗を制しながら、淡々と言葉をつなぐ光秀に追い詰められていく秀吉。いてもたってもいられなくなったケイは、天井の板を外して彼の上に飛び降りた。

「秀吉さん達をいじめないでくださいニャ! 僕が勝手にこの世界に飛んできて、たまたま、三成さんを助けただけですニャ! 悪いのは、三成さんを傷つけたあいつらですニャ!」
「………ケイ! あれほど部屋にいろって言っただろう!」
「ご、ごめんなさいニャ! だって、とても心配で、じっとしていられなかったんですニャ…」
「…秀吉、その猫が、件の『化け猫』、とやらか?」
「………ニャ?!!」
「………あ…やべ…。わりぃな、三成、腹を決めてくれ」
「秀吉、三成なら、俺が賊を捕らえた、と言ったあたりから、すでに腹をくくっているぞ」
「…うるせー、光秀は黙ってろ…」

 秀吉が慌ててケイを抱えて叱りつけていると、信長の声が響き、光秀の嫌味が飛ぶ。慌てふためく二人と、その傍らで固まる三成を、他の武将達も見つめる。

「光秀、あれは…猫…か?」
「猫みたいだな、政宗」
「あ…可愛い………」
「可愛いって…家康、お前、ああいうのに弱いのか?」
「…ほ、ほっといてください…」

 思わず漏れた本音に突っ込む政宗。秀吉がケイを膝の上に座らせると、信長がさらに尋問する。

「…化け猫に聞くが、名は何という?」
「僕は、化け猫ではありませんニャ! 『メラルー』ですニャ! …でも、昨日、三成さんにこの世界について聞いていたら、僕達みたいのは『化け猫』って言われてるそうなので、それでいいですニャ……」
「化け猫ではなく、めらるー、というのか?」
「種族的には、そうですニャ。あ、名前は、ケイと言いますニャ」
「ケイ、か。俺は、織田信長だ。三成の窮地を救ってくれたこと、礼を言う」
「信長さん、ですニャ?」
「こら、ケイ! 信長様に向かってなんてこと…」
「…?」
「ケイさん、信長様は、ケイさんの世界で言うところの、『ギルドマスター』に当たる方、ですよ」
「……! ごめんなさいニャ! そんな偉い人だなんて、知らなかったですニャ!」
「…構わん、秀吉、好きに呼ばせろ。ケイの口では、言いにくい言葉もあるだろうからな」
「は! …よかったな、ケイ。信長様のお許しが出て」

 こくこくと頷くケイ。まだ、少し緊張しているようだ。信長は、脇息に肘をついて見つめながら、言葉を続ける。

「まだ、聞きたいことは山のようにあるが…、三成の体調も気掛かりだな。光秀、賊に黒幕がいるようなら、速やかに吐かせ、俺に報告しろ、いいな」
「…は、かしこまりました」
「三成、貴様は、傷が完治するまで暇をやる。しっかり療養しろ。それから、ケイはお前の恩人なのだからな、丁重にもてなし、不自由なくここで暮らせるようにしてやれ。今日の軍議はこれまでとする。下がってよい」
「は! かしこまりました」

 全員が頭を下げ、信長の退室を見届けると、光秀がゆっくりとケイの前に歩み寄ってきた。

「ケイ、でいいのか? ちょっと、確認してほしいことがあるんだが、付き合ってくれるか?」
「はいニャ、えっと…」
「明智光秀、光秀でいい。間違いがないと思うが、投獄している奴等を念のために確認して欲しいんだ。三成では、暗がりな上に顔を隠していたというから、正確に確認できんかもしれない。が、君なら、鼻が効くからな。においででも確認できるだろう」
「光秀さん、ですニャね? 分かりましたニャ」
「なら、俺が連れて行く。あんな危険できったねぇところ、可愛いケイがちょろちょろしていい訳ないだろう」
「…確かにそうだな。じゃ、行こうか」

 秀吉がケイを抱えて、光秀と部屋を出ようとすると、慌てて三成も立ち上がる。その彼の腕を、政宗が強く掴んだ。 

「あ、私もお供しま…!」
「三成、お前はこっちだ。家康、薬持って一緒に来い」
「え…?」
「政宗様、何を…!」
「大した傷じゃない、だと? こんなに血の匂いをぷんぷんさせやがって。その上、腕を引っ張ったくらいでこんなに痛がってるくせに、どこが大した傷じゃないんだ? あぁ?」
「それは………!」
「ほら、さっさと来るんだ。無駄に抵抗するんじゃない!」

 政宗の力に敵う訳もなく、三成は家康とともに、彼の部屋へと連れていかれた………。

                ◇◇◇

 ここは、城の外にある牢屋。昨日捕らえてきた浪人達が、手足を縛られて拘束されている。そこに、光秀に連れられてケイ達がやってきた。牢に近付くにつれて、ケイの顔が強張り、体中の毛が逆立っていく。浪人達も、ケイの姿を見るなり、狂ったように騒ぎ出した。

「ば、化け猫だぁ!! 来るなぁ!! 殺さないでくれぇ…!!」
「祟らないでくれぇ! 俺達は、頼まれただけなんだぁ!!」
「助けて…。おかーちゃーん…」
「……このにおい……。光秀さん、こいつらに間違いないですニャ」
「…そのようだな…。いやはや…、俺が尋問した時よりも、楽しい反応をするな…。ちょっと、妬ましい気もする」

 感心したような顔で浪人達を見つめる光秀。やや呆れ顔の秀吉に、全身の毛を膨れ上がらせて威嚇するケイ。光秀は、怯えている三人のいる牢屋の柵に手をかけて、尋問を始める。

「…悪いが、お前等に三成の殺害を依頼した奴のこと、洗いざらい吐いてもらおうか? 吐かない、と言うなら、化け猫様に中に入っていただくことになるが、な」
「は、吐きます! 吐きます! 全部白状します!! だから、化け猫は来ないで…」
「素直でよろし。では、吐いてもらおうか…」

 楽しそうに笑いながら、浪人達の話を聞く光秀。すべて聞き終えると、ケイの頭を撫でながら言った。

「君のおかげで、楽に白状させることができた。ありがとう」
「…お役に立てて、よかったですニャ…。あー、まだ、腹の虫がおさまんニャい! 秀吉さん、あとでちゃんと足を拭きますニャ。ちょっと、下ろしてくださいニャ」
「…分かった」

 秀吉がゆっくりとケイを下ろすと、柵の前まで歩いて行く。牢の奥に逃げ込んで、震えあがっている三人の目の前で、地面から、柵を通るくらいの大きさのタル爆弾を取り出した。

「……!!」
「なんだ? ありゃ…。花火の玉…か?」
「…ほう、火遁の術を使えるのか。すごいな」
「…三成さん、怪我させたお返しニャ!」

 ポイっと、柵の中に爆弾を投げ込み、離れる。じたばたと暴れる三人の目の前で、じりじりと音を立てて、火が樽に近付いていく。やがて、火は樽の中に入って行った、が、何も起こらない…。真っ青になって震えている三人に、ケイがにっこりと微笑んで言った。

「……ごっめんニャ。不発だったみたいニャ」
「…不発って…おまっ…」
「あーあ、三人とも、すごい形相で気を失ってるんだが…」
「あー、すっきりしたニャ。驚かせて、ごめんなさいニャ」
「いいって……、ケイの…気が…それで済んだ…なら…な…」

 堪えきれずに笑い転げる二人。一頻り笑って落ち着くと、来た時と同じように秀吉に抱えられ、ちゃんと足を拭いてもらってから、城に戻って行った。

                 ◇◇◇

 少し時間を戻して、政宗の部屋。三成の着物を脱がし、怪我の状態を確認する二人。同時にため息を吐いてから、家康が言った。

「……よく、生きて帰って来られたね。言っとくけど、そのくらい重傷なんだけど」
「…すみません、家康様…」
「別に、謝れって言ってないし。まぁ、手当てが早くて適切だったから、としか、言いようないけど。でも、この布、どうなっているんだろう…」
「んー? …なんだ? この布…」

 家康が、訝しげに見つめる布を政宗も受け取り、しげしげと眺める。弾力があり、これだけで肌に張り付いて、にじみ出る血液を吸い取っていたようで、赤黒く染まっている。傷の手当てが終わり、着物を着終えた三成が、口を開いた。

「ケイさんは、確か、『ばんそうこう』と仰ってましたが…」
「ばんそうこう? なんじゃ、そりゃ」
「私にも、よくわかりません…。多分、ケイさんのいた世界のものだと思うので…」
「…ケイがいた世界?」
「えぇ…。昨夜も、いろいろと話していただいたのですが、なかなか、興味深いものでした」
「…で、昨夜は、ほっとんど寝なかったんだってな? 三成」

 楽しそうに微笑んで話していると、背後に、ケイを抱きかかえた秀吉が音もなく現れ、睨みつけていた。

「秀吉様…」
「秀吉、いつの間に来た?」
「今、来たところだ。ここに来ながら、ケイから聞いた。全く…、興味がわいて話を聞きたいのはよくわかる、が、まずは、傷を治すことに専念しろ! ケイが心配してついてくる訳だ」
「申し訳ありません…」
「まぁ、家康にみてもらったのなら、もう大丈夫だろうからな。今日は戻って、しっかり休め。いいな」
「…はい…」

 秀吉の説教を神妙な面持ちで聞く三成。その傍らに、ケイがそっと寄り添う。と、家康が彼女に質問を始めた。

「…ケイ、でいいのかな? あ、俺は、徳川家康。家康でいい。あ、この人は、伊達政宗さん、だよ。少し、話をしてもいい?」
「家康さん、と、伊達政宗さん、ですニャ? なんですかニャ?」
「…俺も、政宗でいい…」
「ごめんなさいニャ、政宗さん」
「…えっと、この、『ばんそうこう』のことなんだけど…」
「あ、それですニャ? それは、傷口をふさいで止血しながら、傷を保護するためのものですニャ。三成さんの傷は、綺麗に切れてたから、早くくっつきましたニャ」
「そうなんだ。…て、言うことはやっぱり、君が三成の手当てをしてくれたんだね。処置が早くて適切だったから、こいつ、生き延びることができた。本当にありがとう」
「いいえ…。僕の方こそ、この世界のことは何もわからなくて、三成さんがいてくれなきゃ、どうなっていたかわかりませんニャ…。感謝してますニャ」

 ぺコリ、と頭を下げるケイを優しく微笑んで見つめる家康。政宗は、秀吉の方を向いて言った。

「そういえば、三成を襲った黒幕は、分かったのか?」
「あぁ…。光秀は、信長様に報告に行ってる。…黒幕は、信長様に反旗を翻している、あの大名だ」
「あぁ? なんでまた?」
「…話さなかったが、奴は三成に、自分の家臣にならないかって言い寄って来たんだ。無論、三成は即答で断ったけどな。それを逆恨みしたのと、三成さえいなきゃ、織田軍に勝てる、と思い込んでいるみたいだ」
「そんな…。私ごときを殺したからと言って、織田軍が総崩れになることなどあり得ないのに…」
「……ほんと、随分となめたこと言ってますね…。無論、徹底的に思い知らせてやりますけど、ね」
「そう、いきり立つな、家康。光秀も気にしていたが、暗殺に失敗したことが向こうにも知れただろうから、自棄を起こして、戦を仕掛けてくる動きが早まるかもしれない。用心してかかれよ」
「…はい。情報、ありがとうございます」

 ぎらり、と目を光らせる家康に、秀吉が力強く頷く。政宗は、ポンポンと三成の頭を撫でて、少し脅すように言った。

「さて、お前はもう、ケイを連れて自分の御殿に帰れ。今回の陣は、家康に全て任せておばいい。分かったな」
「政宗様、ですが…」
「まだ、文句があるのか? 熱も出始めてるくせに、無理しやがって」
「………分かりました…」
「よし、いい子だ。ケイ、悪いが、こいつをよーく見張っててくれ。目を離すと、すぐに無理をしだすからな」
「分かりましたニャ! ちゃんと、看病しますニャ!」

 きりっと話すケイに、その場の空気が和んだ。家康は、彼女に熱冷ましと化膿止めの薬、傷薬を渡し、使い方を説明した。

「…こっちの、緑の包みが化膿止め。夕餉の後に飲ませてね。こっちの白い包みが熱冷まし。熱があるときに白湯に溶かして飲ませて。それから、これが傷薬。朝晩、包帯を変える時に傷口に塗ってね。…面倒をかけて、ごめんね」
「大丈夫ですニャ。家康さんも、大変でしょうが、頑張ってくださいニャ」
「ありがとう。必ず、黒幕の首を取って来るからね」

 ケイは、受け取った薬をポーチにしまい、帰宅する三成に付き添って、彼の御殿へと帰って行った……。

                ◇◇◇

 御殿に戻ると、寝室に入って着替え、ようやく横になる三成。ケイは、家康に言われたとおりに熱冷ましを準備して、彼に渡した。

「はい、ちゃんと飲んでくださいニャ」
「ありがとう…。苦い………昨日のケイさんがくれた青汁の方が、美味しかったな…」
「良薬は、苦いものですニャ。そしたら、夕餉の時間まで、ゆっくり休んでくださいニャ」
「はい…。あ、ケイさん。…また、ケイさんの住んでいた世界の話、聞かせてくれませんか?」
「……ちゃんと休んだら、話しますニャ。まずは、ちゃんと寝てくださいニャ」
「……はい…」

 ケイに諭され、ようやく眠り始める三成。完全に眠りに落ちたのを確認して、そっと掛け布団を直し、寝顔を見つめる。ポーチから、いつもの写真立てを取り出して見つめ、心の中で語り掛ける。

(……ミヤビ、僕、まだ生きていていいかな? 三成さんを守るため、生きていていいかな?)

 写真の中の彼は、優しく微笑むだけで、何も答えてはくれなかった…。

                  ◇◇◇

 あの事件から、一週間が過ぎた。三成の傷は順調に回復して、御殿の庭を散歩できるくらいまでになっていた。そんなとき秀吉が、件の大名を討つべく出陣した家康が、武功を立てて戻って来たと報告してくれた。

「……と、いう訳で、全て終わったぞ。もう、大丈夫だ」
「よかったです。家康様もご無事のようで…」
「あぁ。あの大名の持っていた領土は、家康が治めることになった。もう、反乱が起こることもないだろう」
「そうですね…。家康様が統治なされるのなら、安心でしょう」
「お前は、無理するなよ。治りかけの時が、一番大事なんだからな」
「分かりました…。秀吉様、本日はありがとうございます…」
「気にするな。政宗も光秀も、気にしていたぞ。ちゃんと治せよ?」
「はい…」

 三成が、少し寂しそうに頷いて返すと、優しく頭を撫でて秀吉が微笑む。用が済むと、残っている仕事を片付けるため、城へと戻って行った。
 彼が帰ったのを見届けると、着物を着替えてから、ケイを呼んだ。

「ケイさん、ちょっと、散歩に出かけませんか?」
「どこにですニャ? まだ、怪我が治っていないのに、大丈夫ですニャ?」
「城下の方に少しだけ…。あ、無理はしません。安心してください。それに、少し動かないと、体がなまってしまいますから」
「分かりましたニャ…。辛くなったら、いつでも言ってくださいニャ。すぐに御殿に帰りますニャ」
「はい、わかりました。では、行きましょうか」

 にっこりと微笑んで、ケイの手を取って歩き出す三成だった…。

                   ◇◇◇

 城下町を歩く二人を、街中の人が振り返る。どうやら、ケイのことがすでに、街中の噂になっていたようだ。いくつか露店などを回って疲れたのか、茶屋に落ち着いて饅頭とお茶を頼むと、店主がしげしげと彼女を見つめて、話しかけてきた。

「…三成様、この子が、三成様の命を救ったという、化け猫様ですか?」
「え…、あ、そうです」
「そうでしたか…。いや、御城から来る皆様が、三成様を狼藉者から守った化け猫様がいる、と言っていて、どんな子かと想像していたんですが…。こんなにかわいらしい子だったとは…」
「そうでしたか…。どうりで、皆が驚いた顔をしていると思いました…」
「えぇ、儂達は、もっとおどろおどろしい、妖怪のようなものを想像してましたからね…。あ、お茶と饅頭、でしたね。少々お待ちを…」

 ニコニコと微笑んで、お茶とお饅頭を持ってくる店主。ケイは、見たことが無いお菓子を見つめ、三成を見ると、優しく微笑んで頷かれた。恐る恐る口にすると、柔らかい皮に包まれた、しっとりとしていて甘い餡が、口一杯に広がっていく。

「三成さん! これ、めちゃめちゃ美味しいですニャ!」
「口にあって、よかったです。ここのお饅頭は、城下一なんですよ」
「そうなんですニャ。こんなに美味しいものがあるなんて、知らなかったですニャ」
「ケイさんの世界には、なかったのですか?」
「なかったですニャ…。この世界には、他にも美味しいものがあるのですニャ?」
「えぇ、きっと、ケイさんが知らないものや、知らないことがたくさんあるでしょうね…」
「…そうですニャ…。なんか、この世界のこと、いろいろ知りたいですニャ」
「時間はたくさんありますから、ゆっくりと知っていけばいいですよ。私も、ケイさんから、もっといろいろ聞きたいですし…」
「そうですニャね…。なんだか、とっても楽しみですニャ」

 嬉しそうに話すケイを、優しく見つめる三成。食べ終わると、二人仲良く、御殿へと戻って行った…。

                     ◇◇◇

 御殿に戻ると、門の前で、政宗が腕を組んで仁王立ちして待っていた。

「三成、なぁーにをほっつき歩いているんだ?」
「政宗様、どうかしましたか?」
「どうしたもこうしたもあるか! 治りかけの体で、何をうろうろしてるんだ? 全く。熱でも出たら、どうするつもりだ?」
「…体調に、変化は見られませんニャ。今のところ、大丈夫みたいですニャ」
「…そうか。心配かけてすまないな、ケイ。看病で籠りっきりだったケイを気遣ってのことだろうが、無理はするな。秀吉が心配してるぞ」
「…はい…。申し訳ありませんでした…」
「ま、熱が出る前にちゃんと休んで、早く復帰して来い。いいな。あ、これ、夕餉にでも食え」
「…ありがとうございます、政宗様」

 三成の頭をポンポンと撫でて、風呂敷包みをそっと手渡す政宗。彼はそのまま、軽く手を振りながら、自分の御殿へと帰って行った…。

                ◇◇◇

 それから数日が過ぎ、三成が公務に復帰して間もなく、ケイに転機が訪れるのであった…。

                   (第四章に続く)

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